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2014/08/31 (Sun) 04:42
伝統木造技術を世界無形文化遺産に

30日に名古屋で「伝統木造技術を世界無形文化遺産に」の初めての打合せをしました。

これから2年間登録に向けてひたすらにロビー活動をします。

「人に伝える」「アイデアを出す」「寄付をする」などどんな形でも結構ですので是非ご支援ください。

よろしくお願いします。
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2014/08/14 (Thu) 17:33
滅びつつある日本の伝統木造

滅びつつある日本の伝統木造

「構想日本」のメルマガ(発行件数2万3千件)に記事が掲載されました。
「構想日本」http://www.kosonippon.org/
「構想日本」は事業仕分けなどの政策提言している団体です。

 「滅びつつある日本の伝統木造」
  
               木の建築設計代表 江原 幸壱

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地球寒冷化が観測される中、日本では地球温暖化防止のために「低炭素化」政策は着実に進行しています。「低炭素化」というのは、建築の分野では生産時も使用時もCO2の排出量を抑えることを言います。それに加え、福島原発事故によって省エネ化は国の絶対的命題となり、建築においては経産省、環境省、国交省の三省を跨いで法整備(省エネ法改正等)が進んでいます。
 
数年おきに改正される省エネ法によって、2020年までにすべての建築・住宅において平成25年省エネ基準(高断熱化)の義務化が決まりました。この基準を達成するために関東以西の温暖地の全住宅は窓を小さくし、寒冷地並みの高断熱住宅にしなくてはならなくなります。これまでの和風住宅のように窓を大きくとった住宅がつくりにくくなります。
 
現在の日本では、建築・住宅においても省エネ化は最優先に取り組むべき課題です。しかし、北海道や東北などの寒冷地を除くと緯度が低い日本の住宅は、ヨーロッパや北米に比べて高断熱化による暖冷房の省エネ効果はそれほど大きくはありません。住宅では家電・照明・風呂の給湯の方がはるかにエネルギー消費量が多い項目です。エネルギー消費量の多い項目を規制した方がより大きな効果が得られます。
 
私は伝統木造の設計に携わっておりますが、その立場から省エネ法改正の問題点を指摘させていただければ、千年以上の歴史がある日本の木造技術の衰退、あるいは消滅につながる恐れがあることです。
 
日本の伝統木造は、日本の高温多湿の気候風土の中で快適に過ごせるように工夫され、もっとも省エネ化された住宅のつくり方です。軒を深く取り、簾をかけて夏の日光を遮り、窓を大きくして風の通りをよくし、夏の暑さをしのいできました。冬は囲炉裏もしくはストーブ、炬燵などの局所暖房でまかなってきました。伝統木造の省エネ効果は、温熱実測調査によって明らかになっています。
 
伝統木造は、地域で採れる木・土・紙などの材料を使い、長年培われた杣・大工・左官・鍛冶などの技術の集大成であり、素材生産から廃棄に至るまでもっとも環境に配慮した建築生産システムが確立されていました。

伝統木造の文化財建造物や江戸時代からの宿場町のまち並みは観光の目玉ですが、技術を持った職人の減少によって保存修復が難しくなってきています。

そして、省エネ法改正による新たな省エネ基準の義務化と新しい温熱計算方法の導入によって、日本の伝統木造の歴史が途絶える可能性があります。小さな窓の住宅へ誘導する計算方法は、掃き出し窓が多い伝統木造にとっては不利に働きます。一品生産の伝統木造は、温熱計算に乗せるための数値化に手間がかかり、現実的ではありません。
 
2000年以降の住宅政策は、大手ハウスメーカーにとって有利なものばかりです。これまでに住宅関連の法律が制定される度に伝統木造住宅は蚊帳の外に置かれてきました。その都度、伝統木造に関わる職人、建築士が国交省に申し入れ、辛うじて伝統木造の建設が継続できています。
 
私は、大学では学べない伝統木造の知恵や技術を職人から直接聞いた最後の世代になってしまうことに忸怩たる想いがあります。
 
日本の伝統木造技術は世界に誇れる技術・文化です。「和食」が世界無形文化遺産登録されたことに倣い、「日本の伝統木造技術」においても世界無形文化遺産の登録を目指すべきだと考えております。この登録は、今日の伝統木造技術の危機的状況を打開する唯一の方法だと思います。世界無形文化遺産の登録を目指すこの活動が、建築界のみならず、日本文化を大切に思う芸術・芸能・文学・学術などのあらゆる方々のご支援、ご協力を賜り、実現することを切に願っております。

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江原 幸壱(えはら こういち)

木の建築設計代表。http://www.kinokenchiku.biz/writing.html 一級建築士、住宅性能評価員。国産材・伝統的木組み・シックハウス対策・「本当に住みたい木の家」http://www.kinokenchiku.net/ をコンセプトに建築・住宅の設計・コンサルタントに従事する。『建築ジャーナル』誌コラム「建築と政治」を5年間連載。『新・木のデザイン図鑑』『新・和風のデザイン図鑑』『木のデザイン最強マニュアル』等執筆。「伝統木造技術」の無形文化遺産登録、「建築基本法」制定に取り組む。伝統構法をユネスコ無形文化遺産に!http://dentoh-isan.jp/about-campaign

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