現在国交省から以下のパブコメの募集がされています。
『エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準案に対する意見』について、今後の住宅・建築のあり方を左右するため建築士の良心として以下の意見を国交省に送りました。
建築関係者でもまったく気づいていない場合が多い告示の改正です。
建築関係者でパブコメを送ろうと思いながら、どこをどう書いたらよいか躊躇されているのではないでしょうか。
「日本の建築のために今回の告示改正を拒否します。」という一文でもよろしいのではないでしょうか。
できたら簡単な理由を添えて意思表示だけでもして置いた方がいいでしょう。
意思表示がなければ承認したことになってしまいます。
私は告示の条文にコメントするのは能力がないのとばからしいと思いから諦めました。
本心で「告示の改正および省エネ対策の方針について拒否します」という一文を送りたい気分です。
大元は村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構理事長・元空気調和・衛生工学会会長・元日本建築学会会長・元建築研究所理事長・)の「民生用エネルギー消費と消費者の行動パターン」に書かれている策略にあると考えています。
●民生用エネルギー消費と消費者の行動パターン
http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-70/mat04.pdf
そして村上氏の誘導策は着実に
●エコハウスは健康ハウス。本当ですか?
http://www.challenge25.go.jp/knowledge/future/teitanso/naruhodo/03.html
前田前大臣の認識です。
●まえたけだよりweb版
http://ameblo.jp/maetake-diary/entry-10996017724.html
「特に人口の約9割が暮らす次世代省エネ基準の第4、第5地域(関東以西)に早く断熱基準を導入すべき。住宅の省エネ化において「断熱基準の義務化」は大変重要なテーマです。」
http://ameblo.jp/maetake-diary/entry-10995034766.html
「世界の先進諸国ではエネルギー問題の解決策として再生可能エネルギーの導入促進とセットで住宅の断熱の義務化が当たり前となっています(お隣の韓国や中国でさえ義務化されています)。」
http://ameblo.jp/maetake-diary/entry-10525366494.html#main
村上周三先生の誘導
■財産権の侵害について
憲法違反である。憲法には「財産権の保障」がある。規制の義務化によって既存不適格になる建物は資産価値が減る。財産権の侵害である。「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」において「規制を受ける国民に重い負担が生じ、厳しい財産権の制約になりうる」という指摘に対して明確な回答はなく、「財産権の侵害」を無視したまま規制を行っている。
■省エネ基準の見直しで省エネにはならないことについて
省エネルギー基準の見直しによる住宅の省エネ化は実現できない。建築基準法によって居室の換気回数は1時間あたり0.5回である。熱交換型換気扇の換気扇の使用率は低いので高断熱化による省エネ効果は低い。
地域区分5,6について高断熱化は無意味である。全館冷暖房と局所冷暖房のエネルギー消費を比較すると全館冷暖房による方が大きいので義務化された場合実質的にエネルギー消費は増大する。
■省エネについて
家庭部門における省エネは、「エネルギーマネイジメントによる対策」の表から、電化製品の使用制限の方が建物の高断熱化よりも費用対効果が高く、現実的である。経済浮揚のための電化製品、建築設備の購買誘導策より抑制策の方が省エネになる。
■住宅の高断熱化の費用対効果について
費用対効果が低い。審議委員のデータによると高断熱化による費用負担は新築住宅で100万円、断熱改修で220万円かかる。それに比較して地域区分5、6の冷暖房費は年間4~5万円なので費用負担が著しい。高断熱化工事の強制は無駄な出費を強要する。
■省エネ基準の見直しによる建築不況について
成長戦略では既存住宅の断熱改修を義務化する方向に検討されているが、耐震改修が進まない状況を勘案すると既存住宅の断熱改修は進まない。さらに断熱改修の誘導は産業廃棄物の量を著しく増大させる。市場を考慮しない戦略は致命的である。今回の改正で建築費のコストアップにより建築不況の再来を起こす。経産省、国交省の責任は重大である。
■地球温暖化防止のための二酸化炭素削減について
日本の二酸化炭素削減が地球温暖化防止に寄与するという科学的根拠は存在しない。
2020年に低炭素社会を実現すれば地球温暖化防止になるという科学的根拠を呈示すべきである。
■二酸化炭素の排出量の削減の費用対効果について
国内の二酸化炭素の排出量は冷暖房については全体の2.4%である。今回の告示の改正による二酸化炭素の排出量の削減効果は1%に満たず費用対効果が極めて低いため、無駄な投資を強いるものである。
■低炭素化、省エネ化がもたらす建築への影響について
低炭素化、省エネ化は費用対効果が低く、その割に建築全体に対する影響が非常に大きい。日本の建築のあり方を変更し、国際競争力を落とすことになる。さらに日本の伝統木造建築の生産システムおよび技術の伝承を大きく阻害する。建築のあり方全体として低炭素化、省エネ化を検討すべきであり「省エネルギー判断基準等小委員会」および「建築環境部会」だけで検討すべきではない。建築実務の委員が少なく市場の見方を誤っている。
■低炭素化、省エネ化の国民に隠されている目的について
住宅において省エネ化および低炭素化はCASBEEの普及と経済政策が目的であり、省エネ効果および温暖化防止効果はほとんどない。国民に対しての悪質な誘導政策である。
2007年12月の中央環境審議会において国民の誘導策が「民生用エネルギー消費と消費者の行動パターン」によって呈示されている。
以下を追加しました。
■地方自治体への影響について
非住宅建築物の高断熱化の義務化によって、地方自治体は新築公共建築物のコストアップおよび既存公共建築物の高断熱改修によって財政負担が増大する。地方自治体の意向を調査しないで法令で定めることは地方分権に反している。
■耐震改修への影響について
既存建築物の高断熱化の義務化は減災社会にとって急務の耐震改修促進の足かせになる。これまでの耐震化促進のための助成金は高断熱化のために減額され、耐震化が阻害される。
民間の投資も耐震化よりも高断熱化へ流れ、耐震化のインセンティブを阻害する。
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江原幸壱の執筆本当に住みたい木の家