7月5日に港区芝の建築会館で行われた「第2回建築・社会システムに関するシンポジウム」に参加しました。日本建築学会では建築基本法を視野にいれて連続シンポジウムを開催しています。
http://www.aij.or.jp/jpn/symposium/2010/100705.pdf
建築には、その地域の環境を整えるために建物の用途、容積率、建ぺい率、高さ、防火の制限などを定めた集団規定と、建物一つひとつの強度や性能に関することを定めた単体規定規があります。今回は建築基準法の単体規定について話し合いました。
そのそも建築をつくる際に、専門家に裁量を任せ原則的に自由にし、最低限の安全性を法律で定める方法と、原則的に制限を設け、制限の範囲で建築をつくることができるようにするかという議論があります。
現行の建築基準法は前者で、法律で最低限の基準を設け、それを満たせば法的には問題ないとされています。しかし、それでは建築の質の向上を目指すときになんのモチベーションもメリットもないので、法規に従っていればよい、最低限を満たせばよいという建築ばかりになってしまっています。実際は建築基準法に引っ張られてかなり不自由になっています。専門家の裁量権がなかったり、政令や告示で細かく定められてしまい、それに併せて作ればいいと言う建築士も多くいます。
2007年の建築基準法の改正ではさらに確認の厳格化のためにまともに建物が建てられなくなってしまいました。
講師の松本先生からは建築基準法の性格と法律の限界について話を聞きました。建築基本法制定には否定的なご意見です。
神田先生は、建築構造の専門家として立場から、現行の建築基準法が細かい技術的規定をしていること自体がおかしいと、根本的に改革するために建築基本法制定が必要であると発案しています。
辻本先生は日影規制について、自身の経験からどのように日影規制がつくられたかについて解説してくれました。また、個人的関心から排ガス規制について日本と米国を比較し、規制が作られ過程とその後の法律上の数値のメンテナンスの必要性を訴えました。
杉山先生は建築のスクラップ・アンド・ビルド(建てては壊す)からストック(質の良い建物を長く使っていく)社会において建築規制がどうあるべきかを提言しています。建築基本法について、インナーサークルで議論するのは止めて、早く一般の方と議論する必要があると強調されていました。
建築界でこのような議論がされるのは珍しいことですが、建築基本法というテーマが出てきて議論を活発に行えるようになったは「建築改革」にとって大変よいことだと思います。
次回シンポジウム
「裁量性を有する建築規制の可能性」
http://www.aij.or.jp/jpn/symposium/2010/100713.pdf